●8●
JISSEN NEWS 2007.秋No.157

 
 
  1日目最後の訪問は、飯能市内の設計事務所 創夢社を主宰する吉野勲氏です。吉野氏は西川材を用いた家づくりを設計者の立場から実践されており、あわせて木のすまいづくりのネットワークである素木(すき)の会の推進役もされています。事務所でお話を伺った後、手がけられた住宅も案内いただきました。夕方遅くなり辺りは薄暗くなりつつある中で、伝統構法・真壁づくりの外観が印象的でした。
 
  予定時間も大幅に過ぎ、宿である新木鉱泉旅館に到着したのは19時を過ぎていました。
旅館は創業して180年の歴史をもつもので、たいへん落ち着いた風情ある建物です。翌日は故山中棟梁が手がけられた建物を見学することになっています。宿泊するこの旅館の改修も棟梁がされたということを知り、一層期待を胸にしながら1日目の行程を終えました。

第2日目 9/30(日)秩父地域

  朝方から雨が降り始めているもののフォーラム参加者は秩父の独自文化を探るべく、意気揚々と新木鉱泉旅館をあとにして、道の駅・大滝温泉/休憩処・郷路(ごうろ)館へ向かいました。休憩処・郷路館は、故山中棟梁が木の肌を活かした太い磨き丸太をふんだんに使用した建築でした。この丸太は、村の先人達が90年も前から育ててきた樹木を村有林内より伐採したもので、縄文建築を連想させる素朴な建物となっていました。ちなみに「郷路館」の名称は、金田一春彦先生が命名されたそうです。


 
  その後、秩父市内にある故山中棟梁の山中工務店のご自宅を訪問しました。
大勢で押し掛けたにもかかわらず、ご家族から快く向かいいれていただきました。
お茶、お茶請けなどをごちそうになりひとときの安らぎを味わえました。
さて、本題に戻りまして、山中棟梁のご自宅ですが、棟梁の発想の豊かさをあらん限りに表現している建物といえます。蔵と蔵の間に居間が作られていたり、その居間にある神棚に手を届くように、箪笥の引き出しが階段になったりと。また、地下には、郷土史の研究ができるようにと古き宝物が多数、収蔵されていました。山中工務店・自宅は、山中棟梁の温かみが十分伝わり廃材をいかす試みをはじめとして、創意工夫しているところに感嘆しました。