2003.1 No.135 号の紙面から

□新春のご挨拶「初心に立っての展開を」(早川会長) ●1
■技能五輪くまもと2002/理事就任のご挨拶(岡野理事) ●2
第2回電気・電子・情報系幹事会報告/実践事例討論会のご案内/人づくりフォーラム・木造研
 合同企画が飛騨にて開催!
 ●3

■ロボットの誕生(アトムからAIBO&ASIMOへ) ●4
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  2003
No.135


社団法人 実践教育訓練研究協会

会長 早川宗八郎
 2003年を迎えて新春の慶びを申し上げます。
 昨2002年は午年でありながら、駿馬の飛跳を見ることなく、世界も日本も政治・社会・経済などすべての面で重苦しく厳しい状況がつづきました。本年も「未辛抱(ひつじしんぼう)」の年となろうといわれています。しかし、私たちが担っている職業能力開発は、個人はもとより社会・国家・世界のレベルで注目され、今後の展開が期待されている課題の一つとして、辛抱努力し甲斐のある仕事です。
 私たちは職業能力開発の中でとくに「ものづくりの能力開発」(私たちは「実践教育」と呼んでいる)に参加しており、これは一般には広く「技術教育」と呼ばれているものに属すると云ってよいでしょう。個人のキャリア形成の基盤となるもので、当然学校教育との関連は深く、またそれに継続する社会教育や生涯学習とも関連して、広い背景を持っていることはいうまでもありません。
 わが国の第2次世界大戦敗戦後の立ち直りと復興とは奇跡的とも言うべきものでした。その理由として、産業振興重点の公民の協力、勤勉な国民性、国際情勢など、が挙げられていますが、それとともに当時の国民全体に技術的素養があったことも重要な要因として指摘されています。いろいろな材料や機具を創意工夫して使っていたという生活環境によって身についていた能力でした。まさに「ものづくり能力のリテラシー」を習得しており、それが国の発展の基礎になっていたのです。
 しかし、その後の国力の伸長に伴い、生活の便利性、製品の過供給、創意工夫体験の減少などにより、国民の技術的素養は急激に衰退しました。これを修正すべき教育の方針が学歴社会に応じた偏差値教育に走り、技術教育は圧迫され続けてきました。バブル崩壊を契機に、技術的素養の低下の影響の重要さに気がつき、「一度衰退したものの復元は至難の業」との危機感が文化・産業など多くの分野で訴えられ始められました。
 政治・行政・経済・産業・教育すべてに根本的改革が必要とされている現在は、終戦直後に持ったような立て直しの精神が必要と思います。製造業の復権には、すでに叫ばれているように、「ものづくりリテラシー」から「高度技能技術」までの新しい体系構築が不可欠です。そしてそれに即しての個人のキャリア形成を支援する教育訓練の組織と人材が必要です。
 私たちの協会は、公民を問わず、ものづくりの教育訓練を担当してきた専門家の集団です。上記の課題に関する具体的なテーマを選び、もっと自由な立場で、もっと大胆な視点から、立案し提言できる集団であると自負しています。それには公共の組織や民間の諸団体と協力する必要もありましょう。これは当教会が当初から目指したものであり、初心というべきものです。
 最後になりましたが、会員へのサービス、産業界への貢献、財政的自立など、協会の基本課題を常に意識してまいります。活発な協会を目指して会員の方々の尽力と奉仕をお願いいたします。