建築・デザイン系

第15回 木造研究部会

伊勢神宮参拝と木の家ネット会員との交流

 

1. はじめに
 今回の研究会は、平成23年6月25日(土)〜26日(日)に「職人がつくる木の家ネット」で活躍されている三重県の一峯建築設計の池山琢馬さんに、伊勢神宮の外宮と内宮及び伊勢外宮の門前町の河崎の町なみなどを案内していただきました。 また、池山さんの事務所は土壁を用いたセルフビルドですので、土壁の補修や三和土の施工方法についても勉強することができました。 自然素材にとことん打ち込んでいる池山さんの仕事の流儀を建築に関係する私たちが学ぶことができる貴重な機会でした。

 参加者は、建築関連の事業主3名の方と会員3名の6名と少数でしたが、6月末の伊勢路でたくさんの刺激を受けてきました。


2. レストラン・ヒメシャラのツリーハウス
 初日は伊勢市小俣町明野にあるヒメシャラを集合場所としました。

 昼食前にヒメシャラの付属農園に製作中のツリーハウスを見学しました。 荒々しい造りですが竹などの自然素材を活かした田園風景に溶け込んだツリーハウスでした。

 写真1の屋根の上の方が池山さんです。

写真-1 ヒメシャラのツリーハウス内での集合写真

 


3. 賓日館・二見浦夫婦岩 〜 河崎・外宮
 初日の午後は、二見浦の賓日館をまず見学しました。

 賓日館は明治20年、伊勢神宮に参拝する賓客の休憩・宿泊施設として建設された建物です。 千鳥の間の床框や御殿の間の格天井は、伝統木造のすごさを感じました。 賓日館は平成22年に国の重要文化財に指定されました。

写真-2 二見浦の賓日館外観 写真-3 二見浦夫婦岩

 賓日館の見学後、夫婦岩まで散策して外宮の門前町の河崎の町なみを見学しました。

 河崎は、江戸時代には全国各地からの参宮客でにぎわう宇治・山田に、 勢田川の水運を利用して大量物資を供給する大問屋街として発展し、 明治時代まで、伊勢の商業の中心を担っていたとのことです。

 河崎の町なみの中心にある伊勢河崎商人館では地ビールを飲みながら、館長から河崎の歴史を学びました。 勢田川を利用した水運輸送の試みもなされており、楽しみなまちづくりを進めていることが分かりました。 現在もその面影を十分に残していました。

 6月末は日が高いので伊勢神宮外宮の参拝をすませて本日の宿泊場所の木造三階建の山田館にお世話になりました。

写真-4 河崎の町なみ見学 写真-5 伊勢神宮外宮の山田工作所遠景

4. 伊勢神宮外宮前の山田館
 山田館は伊勢神宮外宮の参拝には、最適の立地位置にあります。 木造三階建で、昭和2年に篠崎工務店が施工したとの記録があります。

 山田館は戦火を逃れた貴重な建物となっていますが、旅館業としては近隣の近代的ホテルとの競争に耐えるのが困難な状況になっているのではないかと思われました。

 山田館の女将さんは、大変気さくな方で旅館の今後について、私たちと翌朝に話し合いました。その一つの提案が池山さんの知人の人力車職人さんと外宮や河崎の町なみ見学のツアーの専属契約を結んではどうかというものでした。

 今後の運営計画は、近畿職業能力開発大学校 建築施工システム技術科の開発課題にしてはどうかとの案も参加者から出ました。 その方向に進むことを木造研究部会も期待しています。

写真-6 山田館外観 写真-7 山田館前での集合写真

5. 伊勢市中之町麻吉〜神宮内宮〜池山さんの建物
 2日目は、伊勢市の遊郭跡と懸崖造りで著名な麻吉旅館を見学しました。

 一方は廃屋のような状況で他方は旅館として風格がある対照的な建物を見学しました。 このような貴重な地元遺産を見学できるように設定していただけるのは、池山さんのお陰でありますが、木造研究部会の参加の楽しみの一つです。

 その後、伊勢神宮内宮を見学して池山さんのセルフビルドの建築士事務所と隣接する製材所を見学しました。

 製材所が取り扱う木材は、地元三重の天然乾燥材であることをお聞きしました。 自然素材にこだわりを持つ施主は多いけれども、これだけの取り扱いでは製材業を維持するのは大変なことであると思われました。

 研究会の最後は、池山さんが主宰している四日市市の住宅の再活用の事例を見学しました。

 平屋の建物の内や外で大変個性的な人たちに出会うことができました。 自然素材に熱心に取り組んで活動をしている場所でした。

写真-8 懸崖造りの麻吉旅館での集合写真 写真-9 内宮宇治橋前での集合写真
写真-10 池山さんの建築事務所 写真-11 四日市市の住宅の再活用事例

6. 最後に
 二日間の研究会は、木の家ネット会員の池山さんの案内で大変充実した見学を行うことができました。 特に、池山さんは日本鼻笛協会の会員であることから、「鼻笛」を通してたくさんの方々と交流を深めることができました。 河崎の町なみ、山田館にはその後の進展を確認したいと思っています。

 木造研究部会は15回実施していますが、いずれは同じ場所を見学する企画を立ててみたいと思います。

職業能力開発総合大学校 小平キャンパス 定成 政憲

 

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