建築・デザイン系

第9回 木造研究部会

 建築・デザイン系第9回木造研究部会を平成15年11月29日(土)13:00〜30日(日)15:00の二日間、京都府左官技能専修学院において日本壁(土壁)の研修を実施しました。研究部会には18名が参加し、参加者は北海道職業能力開発大学校1名、職業能力開発総合大学1名、京都職業能力開発短期大学校1名、ポリテクセンター滋賀1名、滋賀職業能力開発短期大学校1名、近畿職業能力開発大学校3名、元福山職業能力開発短期大学校1名、四国職業能力開発大学校2名、香川県立丸亀高等技術学校11名、九州職業能力開発大学校1名、大分県立工科短期大学校2名、京都市住宅供給公社1名、設計事務所2名の方々です。

1. 木造研究部会
1.1 開講挨拶(平尾 茂 氏:京都左官協同組合専務理事)

 11月29日(土)は13時から第9回木造研究部会を開催し、京都左官協同組合専務理事の平尾茂様に開会にあたり挨拶を頂きました。平尾専務理事は建築・デザイン系の賛助会員担当幹事の役職にあることから、今回の木造研究部会実施にあたり多大なご配慮を賜りました。

写真-1 京都左官協同組合平尾茂専務歓迎の挨拶


1.2 講演 「土壁の基本事項」
(杉本 誠一 氏:近畿職業能力開発大学校 教授)

 当日は開会挨拶後、13:20より『土壁の基本事項』と題して、近畿職業能力開発大学校建築施工システム技術科杉本誠一教授に講演いただきました。左官土の種類や特徴、左官道具の種類、土壁の施工法等について、重要事項を説明いただきました。二日間の土壁研修を実施するための技術的な知識を参加者全員が得ることができました。

写真-2 近畿能力開発大学校杉本誠一教授の講演


1.3 講演 「土壁パネル工法」
(村上 博 氏:京都左官協同組合 聚楽会会長)

 引き続き14:20より『土壁パネル工法』と題して、京都左官協同組合聚楽会会長でかつ(株)丸浩工業社長の村上博様に荒壁の工期短縮を図るために荒壁下地パネルを開発した経緯と製品及び施工方法について講演いただきました。
 『土壁パネル工法』の物件としては、2004年浜名湖花博パビリオンに荒壁パネルを2500m2施工中であるとの紹介がありました。“ものづくり”については、“考えること”と“つくったものにほれること”が重要であるとの持論を述べられ、参加者一同がものづくりに臨む意気込みを再確認できました。“土”+“木粉”+“珪藻土”を主成分とした球形の新製品も近いうちに注目されると思います。

写真-3 聚楽会会長・(株)丸浩工業村上博社長の講演


1.4 講演 「住宅での土壁施工の動向と職人育成」
(福井 一雄 氏:京都左官協同組合 聚楽会副会長)

 次に、15:20より『住宅での土壁施工の動向と職人育成』と題して、京都左官協同組合聚楽会副会長・前京都府左官業組合連合会会長の福井一雄様に、現在の土壁が健康住宅用建材として見直されてきている現状と今後の需要に向けての職人育成の取り組みについて講演いただきました。
 防火基準の改定によって土壁の可能性が広がることや左官土の産地の違い等によって強度性能が異なることを説明いただきました。住宅への土壁の需要は特に健康住宅用建材として注目され増加傾向を示していることから、今、職人育成を行っていくことが重要であることを強調されました。“仕事は仕事に習え”が、職人が技能を向上させるための鉄則であるので、技能修得のための“仕事をつくっていくこと”が現在の課題であることを述べられました。“技能伝承の場=仕事”を建築関係者が造っていくことが、優秀な職人を育成していくために必須のことだという認識を持ち、そのように行動をとっていく必要があると思いました。

写真-4 聚楽会福会長・前京都府左官業組合連合会福井一雄会長の講演


1.5 講演 〜左官技能専修学院外壁彫刻ほか〜
(西村 弘三 氏:左官技能専修学院 学院長)

 16:20より、今回の第9回木造研究部会の会場である京都府左官技能専修学院学院長の西村弘三様に左官技能専修学院の建物外壁に施された京都の祭りをテーマにした彫刻について説明をしていただきました。また、西村学院長の修業時代のエピソードとして給料の大部分を左官道具の購入にあてて修業に励まれたことなどのお話から、超一流の職人になるために言葉で言い表せない努力を重ねられてきたことに深く感動しました。

写真-5 京都府左官技能専修学院西村弘三学院長の講演

 初日の最後は、先斗町で鴨川を見ながら先生方と参加者で懇親を深めました。

 

写真-6(左)「天授庵」の紅葉
写真-7(右)懇親会風景


1.5 講演 〜左官技能専修学院外壁彫刻ほか〜
(西村 弘三 氏:左官技能専修学院 学院長)

 16:20より、今回の第9回木造研究部会の会場である京都府左官技能専修学院学院長の西村弘三様に左官技能専修学院の建物外壁に施された京都の祭りをテーマにした彫刻について説明をしていただきました。また、西村学院長の修業時代のエピソードとして給料の大部分を左官道具の購入にあてて修業に励まれたことなどのお話から、超一流の職人になるために言葉で言い表せない努力を重ねられてきたことに深く感動しました。

写真-5 京都府左官技能専修学院西村弘三学院長の講演

 初日の最後は、先斗町で鴨川を見ながら先生方と参加者で懇親を深めました。

 

写真-6(左)「天授庵」の紅葉
写真-7(右)懇親会風景


2. 施工実習

 二日目の11月30日(日)は9:00〜15:00まで日本壁の施工実習を行いました。土壁施工実習は、前日に講演いただいた村上博先生、福井一雄先生、西村弘三先生の超ベテランで各賞も受賞されている日本の左官の重鎮に参加者は指導していただきました。

写真-8 西村弘三先生による塗壁の説明

 土・すさ・水の量などについて説明を受け、土の練り方から実習を始めました。壁土の用意ができた後は、鏝の使用方法と壁の塗り方を教わりながら参加者各人が中塗りに挑戦しました。

写真-9 西村弘三先生による鏝の使い方の説明

 慣れた手付きの方あるいは学生と同じような超初心者の方などいろいろな参加者の技術レベルでしたが、午後には土と鏝そして鏝板をスムーズに使って中塗り壁を塗れるようになってきました。最後に刷毛を使って柱や桁のちり掃除の方法を教わり、掃除の大事さを実感し、参加者全員が中塗り壁の施工を修了しました。

写真-10 塗壁の実習風景

 参加者全員が今回の第9回木造研究部会の左官研修に満足しました。なお、北海道職業能力開発大学校から参加された先生は、“荒壁パネルにほれこんで”(株)丸浩工業に見学に出向きました。北海道にも近いうちに土壁が本格的に導入されるものと思います。

 最後に来年度の第10回木造研究部会は、岡山県木材加工技術センターで開催する方向で検討することになりました。同木材加工技術センターと建築・デザイン系木造研究部会との共同研究も視野に入れる予定です。
(報告者:滋賀職業能力開発短期大学校・定成政憲)

写真-11 壁塗り実習終了後の集合写真(撮影:杉本誠一氏)

 

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