建築・デザイン系

第10回 木造研究部会

 建築・デザイン系第10回木造研究部会を平成16年12月4日(土)13:00〜5日(日)12:00の2日間岡山県木材加工技術センターにおいて実物大材料実験を行いながら木材の特性や実験方法やそのテクニックを学ぶ研修を実施いたしました。

 研究部会には、大分県立工科短期大学校1名、四国職業能力開発大学校4名、香川県立丸亀高等技術学校1名、近畿職業能力開発大学校3名、京都職業能力開発短期大学校1名、水島工業高等学校2名、滋賀職業能力開発短期大学校1名、岡山県木材加工技術センター2名、美作木材青壮年経営者協会3名の計18名が参加しました。

1. 木材加工センターの全体説明

 センター特別研究員見尾氏より、同センターが岡山県の北部地域の真庭郡勝山町(美作杉の産地)に位置しており、木材産業の木材・木製品に対する需要者の要望に的確に応え、他材料との厳しい競争に耐え抜くための新しい加工・利用技術の開発や供給期に入った国産針葉樹材の需要開発などへの緊急な対応と県産材の需要拡大と木材産業の振興を図るため、木材の特性を生かした新しい加工、利用技術の開発など応用化、実用化をめざした試験研究、指導を行っている旨説明されました。

写真-1 研修風景

1.1 施設見学

 同センターでは、木材の新しい加工、利用技術の開発など応用化、実用化をめざした試験研究を行うため充実した設備・機器が設置されているので、一通り見学させていただいたが、その充実振りに一同から感嘆の声が上がっておりました。

主要施設・機器

試験研究棟:材質試験室、化学実験室

製材試験棟:製材試験室、注入試験室

乾燥試験棟:乾燥試験室、乾燥制御室

高温乾燥試験棟

加工試験棟:加工試験室、強度試験

写真-2 高温乾燥試験

写真-3 加工試験室


1.2 実験方法などの説明・質疑

 最初に、当日研修させていただく実験の内容方法について説明がなされました。

続いて事前に各会員からメールで寄せられた木材乾燥やシックハウスに関する質問事項に関する回答と質疑応答がなされました。

この時、木材乾燥については回答のみならず、参考図書として技術マニュアルを紹介していただいたり、水分計については実際に様々な機種のご紹介と使用を体験させていただいたりしました。また、接着剤とシックハウスについては貴重な資料をいただくことができました。

写真-4 注入試験室

写真-5 乾燥試験室


1.3 木材の実物大材料実験

 次は、皆興味津々実物大材料実験となりました。小玉研究員により、木材の中を伝わる音の分析によるヤング率の計測、並びに強度予測計算がなされました。続いて、その角材を実大強度試験機により実際の曲げ破壊試験により、音響実験の強度との整合性を確認しました。日頃同様の強度試験経験のある会員からの「そんなに急激な破壊は起こらない」という声を信じ、皆近くでカメラやビデオを構えて見入っていると、突然大音響とともに破断して一同腰を抜かしました。

 実験の結果は良い整合性を確認でき、簡便な音響試験の有効性や実大強度試験の確実性を認識いたしました。

 この実験の時、研修内容が業務に直結しているらしく田島・定成両会員の真剣なまなざしが印象的でした。

写真-6 音響分析ヤング率計測

写真-7 実大強度試験機


2. 「木を使う技術」意見交換会

 場所を格子窓の商家が軒を連ねる町並み保存地区にある白壁の蔵をレストランに改造した西蔵に移し、美作木材青壮年経営者協会の堀氏・鳥越氏・岡氏を迎えて意見交換会となりました。

 最初に当部会から近畿職業能力開発大学校、田島氏「木造建築における面格子壁」、杉本氏「諏訪地方糸萱地区民家調査から」滋賀職業能力開発短期大学校、定成氏「滋賀県産材の活用の試み」の発表がなされました。

 続いて美作木材青壮年経営者協会の三氏より、県土の約7割を占める森林は、木材の生産、水源のかん養、山地災害の防止、地球温暖化の防止など、私たちの暮らしと深いかかわりをもつが、これまで森林づくりを担ってきた林業が停滞し、森林の手入れ不足による公益的機能の低下が危惧されている森林・林業を取り巻く様々な課題や、豊かな岡山の森林を次世代へ引き継ぐため、長期的な展望に立つ森林・林業のあるべき姿について、また今まで木材でできた木質副産物、例えば、おがくずはキノコ栽培用の土のかわりに使用され、端材は割りばしにしたり、細かくくだいた”チップ”と呼ばれるものにして紙の原料に大半は再利用(リサイクル)されてきました。しかし、昨今リサイクル可能な木材として、古い建物を解体したときに出る建築廃材がクローズアップされている。これらのすべてをムダにすることなく、私たちの生活に役立てるにはどうしたらよいか。日本の各地で、木材業者や行政を含めた多くの人達がこの課題を真剣に考えていることの報告がなされました。

写真-8 意見交換会

写真-9 懇親会風景

写真-10 新町商店街「ひのき舞台」


3. 勝山町並み保存地区の見学

 翌日は朝から、白壁の蔵、格子窓の商家が軒を連ねる町並み保存地区の見学が行われました。白壁の蔵が見事な御前酒蔵元辻本店、白壁に囲まれた二百五十坪の屋敷に、長屋門、母屋、土蔵など五十八坪の平屋は、簡素な造りで、格式の中にも質素倹約を旨とする当時の武士の生活が偲ばれる武家屋敷館)、町裏の旭川の岸に石畳と蔵屋敷が続く、ガンギと呼ばれる石段は高瀬舟の乗り降りや荷物の積み降ろしに便利であり勝山のかつての表口、当時の面影が今も町裏に続く石畳とともに残っている高瀬舟発着場跡と見所は枚挙に暇がありませんでした。

 帰路の途中、久世町の中心地にある「旧遷喬(せんきょう)尋常小学校」も見学しました。明治40年(1907)に建てられた木造の小学校校舎で、平成2年(1990)夏までの84年間、現役の小学校校舎として使用され、平成11年に国の重要文化財の指定を受けました。その建築的な素晴らしさに感銘を受けながらも、皆小学校時代にタイムスリップしたかのように嬉々として教室を廻っていました。このとき職員室に立派な復元建築模型がありましたが、その製作者名に今回木造研究会に参加してくださった水島工業高等学校の難波先生の名があり、奇遇さと見事さに驚きました。

写真-11 勝山町並み保存地区

写真-12 武家屋敷館

写真-13 高瀬舟発着場跡

写真-14 旧遷喬尋常小学校

 その後、湯原温泉の砂湯(露天風呂)へ少し足を伸ばし恥ずかしさも忘れ、研修で疲れた体を芯まで温め帰途につきました。

写真-15 湯原温泉砂湯(露天風呂)

文責 四国職業能力開発大学校 山下世為志

 

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