建築・デザイン系

第13回 建築系ひとづくりフォーラム
(兼:ものづくり教育シンポジウム2008)

― ものつくり大学実習見学とものづくり教育をめぐる共同討議 ―

 2008年10月23日、「ものつくり大学」にて、第13回 建築系ひとづくりフォーラムが開催されました。
 今回のフォーラムは、(社) 実践教育訓練研究協会/建築・デザイン系専門部会の「第13回建築系ひとづくりフォーラム」と、(社)  日本建築学会/建築教育の需給構造と建築職能の将来像特別研究委員会/現場人材の育成法ワーキンググループ(WG)の「ものづくり教育シンポジウム2008」のコラボレーションで開催されました。


■開催趣旨
 近年、建設業界では、建設投資の激減、企業OJTの不全、熟練職人の引退、若者入職の激減等により、生産現場の空洞化、品質保証の不安、伝統技能継承の危機等が進行し、次代を担う若者育成が困難化している。若者減の要因は、少子化や3K 忌避以上に職人待遇の劣悪化にあると言われ、今や建設業は若者にとって魅力のない産業となり、どう立て直すかが業界共通の大きな課題となっている。

 これらの状況下、バブル期前後から、注目すべき新たな「ものづくり学校」が各地で立ち上げられた。これらの学校は多様なスタイルをとるが、共通の特徴は、学校教育現場に実践的な「ものづくり実習」を持ち込んだ点にあり、分断傾向にある産業界と教育界を結ぶ意欲的な教育試行として注目を集めている。

 そこで今回は、話題を集めた「ものつくり大学」を会場として、開校8年目の実習の様子を見学するとともに、各地のものづくり教育、企業教育、マスコミ等の関係者をまじえて、業界の人材育成課題やものづくり教育の方法をめぐる総合的討議を行う。

 本シンポは、活動中の「建築教育の需給構造と建築職能の将来像特別研究委員会」(第2次、2007〜2008 年度)の「現場人材育成法WG」が企画し、「ものつくり教育シンポジウム2004」を引き継ぐ場として設定する。また、実践教育に取り組む(社)実践教育訓練研究協会と連携し、「第13 回建築系ひとづくりフォーラム」(主催:同建築・デザイン系専門部会)として共催する。

※ 開催趣旨の詳細については、こちら を参照下さい。


開催概要
●日 時: 2008年10月23日(木)13:00〜17:00
●会 場: ものつくり大学/建設技能工芸学科(埼玉県行田市)
●主 催: (社)日本建築学会/建築教育の需給構造と建築職能の将来像特別研究委員会/現場人材の育成法WG+(社)実践教育訓練研究協会/建築・デザイン系専門部会
●次 第: 13:00 開会挨拶(学会、実践研、大学)
13:10 第一部 建設技能工芸学科の紹介
14:00 校内及び実習風景の見学
(1年生/型枠、溶接、木工実習、2年生/設計、CAD実習、3年生/東屋実習(ティンバーコース)等の見学)
15:00 休憩
15:15 第二部 シンポジウム
16:55 まとめ
17:00 閉会
17:30 懇親会(大学食堂にて)
●シンポジウム: □テーマ: 「建設業界の人材育成と実践的なものづくり教育の方法をめぐって」
□挨拶: 秋山 恒夫(建築教育の需給構造特別研究委員長、(社)実践研協会常任幹事、職業能力開発総合大学校東京校)
□司会: 浦江 真人
現場人材WG主査、東洋大学准教授
2008 建築学会教育賞
三原  斉
現場人材WG幹事、ものつくり大学准教授
□パネリスト: 大湾 朝康
鹿島建設(株)建築企画部人事教育グループ部長
社員教育を担当
内海 豊
日刊建設工業新聞社編集局長、現場人材WG委員
小松原  学
富士教育訓練センター校長
建設業の人材教育を実践、現場人材WG委員
岡田  章
日本大学教授、習志野ドームを毎年実践
2007 建築学会教育賞
池嵜 助成
職藝学院副学院長・教授
在学中に多様な建物建設を実践、2007 建築学会教育賞
田島 幹夫
近畿職業能力開発大学校建築施工システム技術科教授
施工教育を実践
坂口 昇
ものつくり大学建設技能工芸学科長・教授、元清水建設
 

※ このシンポジウムについては、建設工業新聞(2008/10/29)にも掲載されました。

また、「建築雑誌」2009年1月号 Vol.124 No.1584 P.076 にも報告されています。

 


■開催挨拶

 冒頭に、日本建築学会建築教育の需給構造特別研究委員長の秋山恒夫氏が主旨説明を行い、続いて実践教育研究協会理事の石丸進氏とものつくり大学 学部長の中村隆夫氏が、開会のあいさつをした。

▲秋山 恒夫 委員長
(社)日本建築学会
建築教育の需給構造特別研究委員会
▲石丸 進 部会長
(社)実践教育訓練研究協会
建築・デザイン系専門部会
▲中村 隆夫 学部長
ものつくり大学
建設技能工芸学科

 第一部は「ものつくり大学建設技能工芸学科の実習及び施設見学」で、同学科助教の大塚秀三氏による学科説明の後、参加者を3班に分け、「型枠」、「溶接」、「木工の基本実習」、「設計・CAD実習」、「木造応用実習」の東屋制作等の実習風景、および過去に作成した成果物を見学した。

▲大塚 秀三 氏
ものつくり大学
建設技能工芸学科助教

■第1部 建設技能工芸学科の実習及び施設見学

 第1部は大学施設及び実習状況の見学を行った。建設技能工芸学科の説明を受けた後、3班に分かれて約90分かけて施設と実習風景を見せていただいた。

 建設技能工芸学科では、@ティンバーワークコースAストラクチャーコースBフィニィシュコースCデザインコースという4つのコース制が取られており、1−2年次ですべての建設分野の基礎を学び、実習を積み重ね、着実に知識と技能を身につけていくこと、授業の過半数は実習及び設計・演習にあてられ、実習を教えているのは、第一線で活躍する技能・技術者たちであること、インターンシップは、2・4年次合わせて9ヶ月に及ぶ長期間であること等を特色としている。

 ここでは、実習風景の一部を写真によりご紹介することとした。

▲学生が構造物総合実習で制作した
構内陸橋
▲RC造柱の型枠製作及び配筋実習 ▲溶接実習、真剣にアーク溶接作業に
取り組む学生たち
▲熱心にご説明される赤松先生 ▲同じく深井先生 ▲設計実習の風景
▲木造応用実習制作物
木造軸組・小屋組部の制作
▲3年次生の製作による
構内の水に浮いている「浮橋」

 各実習の指導体制としては、教員1名と部外講師3名が担当する体制で、約60名の学生達を4班に分けて実習が行われていた。

 1名の指導員で10名以上の実習作業を指導していくのは大変であるが、教員と講師の連携により、すばらしく充実した実習内容を見せていただくことが出来た。

 建築学会との共催となった今回のフォーラムは、実践研活動を知っていただくことができたことと、人材育成とものづくり教育に関する課題を共有できたことが成果であると思われる。

 なお、下記のHPでは、ものつくり大学の詳細な説明がご覧になれますのでぜひ検索していただきたい。

ものつくり大学ホームページ http://www.iot.ac.jp

 


■第2部 シンポジウム
「建設業界の人材育成と
        実践的なものづくり教育の方法をめぐって」

 第二部は、シンポジウム「建設業界の人材育成と実践的なものづくり教育の方法をめぐって」と題して7名のパネリストが発表した後、ディスカッションを行った。 様々な分野・地域からものづくりを通した教育方法に関する発表があった。

 発表者は、鹿島建設 建築企画部人事教育グループ部長の大湾 朝康氏、富士教育訓練センター 校長の小松原 学氏、日本大学理工学部建築学科 教授の岡田 章氏、職藝学院 副学院長で教授の池嵜 助成氏、近畿職業能力開発大学校建築施工システム技術科 教授の田島 幹夫氏、ものつくり大学 建設技能工芸学科長で教授の坂口 昇氏、日刊建設工業新聞社 編集局長の内海 豊氏であった。

 各校での実習内容の紹介や、主題テーマに関する討議が会場の参加者も交えて行われ、建設業界(ゼネコン・サブコン)、建築学会、各建築関係団体および教育・訓練施設等の相互連携の必要性、若い人へ将来の多用な道筋を示す必要性、子供のころから建築に興味を持ってもらうためのイベントの開催など、様々な観点からの討議と意見交換が活発になされた。

司 会
浦江 真人 氏
現場人材WG主査、東洋大学准教授
2008建築学会教育賞
三原  斉 氏
現場人材WG幹事
ものつくり大学准教授
パネリスト
▲大湾 朝康 氏
鹿島建設 建築企画部
人事教育グループ部長
▲小松原 学 氏
富士教育訓練センター 校長
建設業の人材教育を実践
現場人材WG委員
▲岡田 章 氏
日本大学理工学部建築学科
教授
習志野ドームを毎年実践
2007建築学会教育賞
▲池嵜 助成 氏
職藝学院 副学院長・教授
在学中に多様な建物建設を実践
2007建築学会教育賞
▲田島 幹夫 氏
近畿職業能力開発大学校
建築施工システム技術科教授
施工教育を実践
▲坂口  昇 氏
ものつくり大学
建設技能工芸学科長・教授
▲内海  豊 氏
株式会社 日刊建設工業新聞社
取締役編集担当
シンポジウム開催時は編集局長
現場人材WG委員

※ 1時間40分にわたったシンポジウム記録の詳しい内容は、
2009年6月発行の 実践教育ジャーナルVol. 24,No. 2 をご覧ください。
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