建築・デザイン系

第5回 建築系ひとづくりフォーラム

2001年5月25日、神奈川県相模原市の「職業能力開発総合大学校東京校」にて、第5回 建築系ひとづくりフォーラムが開催されました。


木造、RC造、S造を実物大で建設実習

− 新しい時代の施工管理者育成をめざす「職業能力開発総合大学校東京校」 −

 

■公共施設の新たな試みに多数の方が関心

 第5回は、応用課程立ち上げ2年目の総合大東京校で開催した。当校は会員には周知の部分も多いが、新たな「建築施工システム技術科」(以下、建築施工科と略)の紹介を兼ねて実施し、多くの方々が参加された。

・日時:

2001/5/25(金)午後

・会場:

職業能力開発総合大学校東京校(東京都小平市小川西町)
http://www.ehdo.go.jp/tokyo/ptut/

・参加者:

26名(一般参加16名+会員10名)

・対応:

校側4名(遊佐雅博・松浦勝翼(建築施工科)、但木幸男(建築科)、
小笠原和彦(インテリア科)の各氏)


■専門課程2年+応用課程2年の独自の教育訓練

 当校は、1974年、生産現場に密着した「実践技術者」育成を目的とした「東京職業訓練短期大学校」として開校した。(短期大学校はその後全国に計26校設置)。国が設置、雇用・能力開発機構(旧・雇用促進事業団)が運営する公共能力開発施設の一つである。 時代変化に対応し、近年短大は再編され、1999年より全国10校に応用課程を新設し、名称も「大学校」と改名された。(大学校は、従来の「専門課程」(高卒対象、2年)の上に進学課程として「応用課程」(2年)を付加)。当校のみ、指導員養成を目的とする「職業能力開発総合大学校」(相模原市)の兄弟校として再編された。

●専門課程と応用課程の関係

 新設の応用課程では、ものづくり現場に即した教育訓練をめざし、@応用力を養う「課題学習」、A生産現場に即した「実学融合」、B他分野との共同による「ワーキンググループ学習」等を特色としている。
  応用課程には、「生産システム系」3科(生産機械、生産電子、生産情報)と「建築施工システム系」1科(同名の単科のみ)が設置されている。前者は、2年次に3科融合で「開発課題」を行うのが特徴である。建築施工科は、全国6校に開設された。


■老朽キャンパスを全面再開発、恵まれた環境整備

 一方、当校は旧「職業訓練大学校」の跡地利用で始まったため施設環境の老朽化が激しく、旧キャンパスの全面再開発を10年余年をかけて実施し、快適環境を創出した。(校側主導で企画立案。専門委員として秋山担当。1984構想着手、年1棟ずつ建て替え、1996年完成)

 新設の応用課程棟は、1999年に新築され、建築施工科には独自の広い内部実習場と実験設備が整備された。


■施工管理に特化した科を立ち上げ、意欲的試行

 居住系として「建築科」「インテリア科」(専門課程)、「建築施工科」(応用課程)の3科が設置されている。専門課程では、実験実習主体の基礎的訓練を実施、「建築科」は木造・RC造等の施工実習、「インテリア科」は広い実習場での家具製作や内装実習が特色。

 応用課程「建築施工科」は、「ものつくり大学」開校に先駆け、1999年より独自の実大実習を開始した。新たな時代の施工管理者の育成をめざし、木造、RC造、S造の3大構造物や地盤について、施工計画―工事―性能検証まで一連の実践的実習を行う。200t万能試験機、水平加力実験装置、振動実験台、実大山留め実験装置等の大型装置を導入し、構造にも強い施工技術者をめざす。開催時は3年目に入った段階で、手探り中であった。


■在職者や離職者向けにも多様なコースを実施

 全国の施設では、10年ほど前から、在職者対象の多様なコースが実施されている。(「能力開発セミナー」(2,3日の短期)、「企業人スクール」(10日間以上))。

 近年、厳しい雇用情勢にあわせ、離職者コースが追加され、教員の負担も増えている。(「アビリティコース」(離職者向け、3ヶ月〜1年程度)、「日本版デュアル科」(フリータむけ、2年半、2004年より)


■参加者からの鋭い質問と熱い関心

 最後の質疑では、「運営費の実態は?」、「社会人教育の実態は?」、「公共訓練の課題は?」など、参加者から多様な鋭い質問が相次いだ。雇用保険財源で行われる公共訓練である以上、社会ニーズに的確に応え、運営の透明性を図りながら、深刻化する「ものづくり教育」の新たな展開に寄与することが重要と感じられた。


キャンパスの様子

●キャンパス再開発構想・西広場模型(足かけ10余年をかけ、旧キャンパスを校側主導で全面再開発。構想・監修:秋山。中央:学生ホール、両脇:各系実習棟、奥:グランドと学生寮)

●応用課程実習棟(左手が建築施工科実習場。3階分吹き抜け、天井クレーン付き。各種構造物の実大実習を行う)

●上空からのキャンパス全景(写真は1996年の再開発終了時点のもの。その後1999年、手前管理棟の奥左手に応用課程棟(7F建)が新築された)

●キャンパス入口の管理棟(ゲート建物をくぐると、ケヤキ並木沿いにレンガ・モールが延び、各系実習棟が両側に連なる)

●西広場に作られた茶室と腰掛け(専門課程・建築科学生が卒業製作。材料調達等に苦労したが意欲的に挑んだ)

 

各種の実験実習の様子

●建築施工科のRC造実習(施工計画から工事・性能評価まで、一連の課題を盛り込んで自主建設。1階は実際に生コンを打ち込んだ。実習記録より)

●建築施工科のS造と木造実習建物(木造用のスペースが足りず、S造躯体の一部を外しその間に建設。S造は建て方や仕上げ実習に利用)

●建築施工科のRC造の水平加力実験(柱梁接合部の試験体を加力し破壊性状を測定。在職者対象の企業人スクール記録より)

●建築施工科の木造水平加力実験装置(壁や床の面剛性を計測、解析ソフト連動。団体・企業との共同実験等も実施)

●3層モデルを乗せ作動中の振動実験台装置(阪神大震災等の実際の地震動を入力し、建物の振動特性を計測。2軸式)

●建築施工科の校内ボーリング実習(土質・地盤・山止め等の実験実習を取り入れ。実習記録より)

●専門課程・インテリア科学生の家具作品(広い加工実習場で木工・塗装・内装の実習を行う。他にインテリア設計も)

(秋山恒夫:フォーラム企画担当)

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