本協会が実践教育研究会の名で発足した端緒は、会員の皆さんがよくご存知の通り、職業訓練短期大学校の増設拡充に応じて、短大校教官の自己研鑽と情報交換の自主的な場づくりの要望でありました。ほぼ時を同じくして、職業訓練大学校(現能開総合大校)に短大校指導員養成のコース(研究課程)が開かれ、つづいて自治体にも県立能開短大校が開設される経過をたどりました。一方、ものづくり技能尊重機運によって、企業内職業訓練も組織化・高度化され、民間の認定能開短大校も発展充実の時期を迎えていました。
実践教育研究会が予想より早期に現在の協会の名で社団法人の認可を受けられた背景には、上記の諸情勢が実践技術者の養成を担当する専門家集団の結成を必要とし、その母体として当研究会の性格と実績が評価されたことがありましょう。もちろんそれには当時の労働省と雇用促進事業団の多大の理解と支援があったからです。法人認可の際の趣旨は理事会の構成に現れています。専門部会からの推薦者に加えて、会員の所属母体である雇用・能力開発機構・県立能開短大校・民間企業の能開関係者と数名の学識経験者が理事会を構成してきました。また各委員会や専門部会の幹部には、官民を問わず能開大校・能開短大校・能開施設・技術教育機関の会員などなるべく広い方面から参加してもらっています。認定以前からの支援企業団体との交流もその趣旨を生かすものとして今日まで続けています。認可から10年を経過しました。昨秋実践教育ジャーナル通巻100号の発行に際しても「本協会の来し方行く末」への想いを巻頭言に述べさせていただきましたが、運営の方針とシステムに改造あるいは転換が必要とされていることは明らかです。業務の取捨選択・新事業の開発・会員層の拡大・財務の安定などに適した法人の責任と執行を担う体制が会員のバックアップのもとで構築することが宿題になっていると認識しています。そして、現在各委員会・専門部会は、業務担当理事者会による連絡調整のもとで、上記の事情をよく理解しつつ、各担当事業を企画実行しております。それに注がれている多大の努力に感謝しております。
社団法人には、本来その認可監督官庁の行政の支援団体としての性格が付与されています。その中多くの法人は行政支援事業を主務としています。しかし学協会・研究会などの名の付く法人(例えば応用物理学会)の多くは学問の啓蒙や研究の発表を事業としており、行政の支援という性格は希薄な社団法人です。本協会はこの両者にまたがったものであり、とくに行政改革の進む現在、それをどう調整していくかが運営のテーマであると言えるでしょう。そして日本の社会政治情勢の中で1998年に制定された通称NPO法に基づく非営利特定活動法人(NPO)の性格や自由な業務展開の利点を参考にすることもできるでしょう。 |