建築・デザイン系

第7回 木造研究部会

 第7回木造研究部会は九州の大分県立工科短期大学校(以降大分短大)を主会場として実施した。第7回で企画したが参加者が少なく中止となったリベンジ開催である。

期間は平成14年3月29日(金)午後から30日(土)午前にかけてで、参加者は11名であった。行程はいつもとは反対にエクスカーションの昼食会から始まり、大分短大の見学・意見交換、夜には住居環境科の全先生を交えての懇親会。翌日は、伊集院、松尾両先生の案内で安心院の鏝絵、ホームコネクター工法建築物の「院内町の御沓町営住宅」「大分県森林組合連合会・林業会館」の見学を行った。

 

1.エクスカーション(昼食会)

 大分短大の位置する大分県中津市は、1587年 黒田如水の築城により城下町として第一歩を踏み出した町である。福沢諭吉が幼少から青年期を過ごした町でもある。

 料理は鱧(ハモ)が有名で、色々な料理が用意されている。この料理を戴こうと中津市内にある「筑紫亭」で昼食会を開催した。

 筑紫亭は明治32年創業の料亭である。料理もさりながら日本建築家屋としてのすばらしさも堪能したいとの願いでこの場所が設定された。

 食事の前に若女将に料亭内を案内され、まず目に栄養が行き渡り、胃袋には美味な鱧が収まり、開始早々から参加者の顔がほころんでいた。

写真-1 筑紫亭玄関アプローチ


2.大分県立工科短期大学校

 大分短大は、生産技術科、制御技術科、電子技術科、住居環境科の4科から構成され、各科20名定員である。

 本館アプローチから観て、そして建物内部に入って感嘆の声が出るようなすばらしい建物である。大分県の短大にかける期待の大きさが伺い知れた。

 まずは住居環境科の教室・実習場の見学を行った。廊下や空きスペースに学生の作品が展示され、学生の質の高さ、先生方の行き届いた指導が見て取れた。

 教室・実験室・実習場・各設備共にゆったりと造られ、学生がのびのび学べる環境が整っていた。

 

写真-2 玄関ホール

 見学後住居環境科の先生方との意見交換会が催された。

 大分短大側から木造、RC造、S造の施工実習の進め方や取り組みについて質問がなされ、参加者の中の各担当者から各校で実施している内容が述べられ、細部にわたる質問も飛び出し、互いの良き点が学び取れた。

 最後に実習は、学生に何を実習を通して伝えるかの目的が最初に有って、その方法として最も適した題材で実習を組み立てることが大切であるとの結論に達したようである。

 時間もなくなり、会場を懇親会場に移し、今度は小グループでの熱心な討論がなされ、有意義な短大訪問となった。

写真-3 実習場内部


3.安心院(アジム)の鏝絵(コテエ)

 大分県には640軒1000点余りの鏝絵が残っている。特に安心院(アジム)町には70点余りが現存している。全国で鏝絵(漆喰彫刻)は見られるが、大分県の密集度は非常に高い。

写真-4 妻壁面の鏝絵

 鏝絵とは土蔵や家屋の戸袋、壁面、妻壁面などに描かれたレリーフのことである。平に塗られた漆喰壁面に、鏝を使って薄肉状に盛り上げた浮き彫りを施し、彩色したものである。左官の卓越した技能を必要とし、左官職人の腕を競い合う場ともなり、明治期から大正期にかけて爆発的に施工されこれが100年の歴史を経て現存している。

 駆け足でその一部地域を見学し、左官の技に魅せられながらも、今回の目的であるホームコネクター工法の現場へと向かった。

写真-5 戸袋の鏝絵


4.院内町営御沓住宅

 所在地は大分県宇佐郡院内町、設計者は(株)松山設計、施工者は川面建設(株)、施工期間は平成13年7月4日から平成14年3月20日である。木造2階建ての戸数14戸、住宅本体延べ面積1,160.5uでホームコネクター工法を採用した集合住宅である。

写真-6 御沓住宅説明風景

 安心院の鏝絵見学から案内を頂いていた(株)ホームコネクター代表取締役後藤泰男氏、(株)大分住宅研究室代表取締役の芳山憲祐氏に加え、当町営住宅設計者の(株)松山設計の岩本泰樹氏の3氏の案内で竣工間近い建物の見学を行った。

 ホームコネクター工法の接合方法や金物の説明、そして設計主旨などの説明を受けたのち見学が始まった。木の暖かさ・優しさと斬新なデザイン、そしてホームコネクター工法の特色の金物を見せない継手、様々な工夫に感心しながら建物隅々まで何も見落とさないぞとの見学であった。

 いつものことではあるが時間超過をしながら急いで次の見学地へとの移動となった。

写真-7 御沓住宅外観


5.大分県森林組合連合会・林業会館

 所在地は大分県大分市古国府で、設計者は(株)大分住宅研究室、施工者は(株)菅組で、施工期間は平成8年9月30日から平成9年4月25日である。この建物は大分県産の杉の大断面構造用集成材を使用し、延床面積964.75uでホームコネクター工法を使用した3階建て木造建築物である。

 

写真-8 林業会館外観

 構造材は県内産の集成材、内装材は県内産杉材を使用した建物である。外観は構造体フレームを効果的に見せ、内部は床、壁共に杉板が多用され、3階研修室の天井は構造体の集成材を直接見せ、ダイナミックな空間を創り出していた。後藤、芳山両氏の説明を伺いながら、建物内外をくまなく散策させてもらった。

写真-9 3階研修室


6.ホームコネクター工法

 ホームコネクター工法は、木造建築において木材を美しく、強く、簡単に接合する技術である。

 具体的には、接合すべき木材にドリルで穴をあけ、中空式のボルトに似た接合金物(ホームコネクター)を挿入し、木材とホームコネクター間の隙間を接着剤で完全に充填することにより、木材と木材をガタなく接合する技術である。更に、ホームコネクター自身は木材内部に収納されるため、金属の露出が一切なく、意匠を損なうことがない。また、木材とコンクリート、木材と鉄骨など異種素材との接合可能であり、広い範囲の接合に応用できる。詳しくはホームページ「http://www.columbus.or.jp/venture/home/」を訪れてみてください。

 

写真-10 ホームコネクター金物

 

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