建築・デザイン系

建築系 地域情報 Vol. 16

 

愛媛の木造劇場建築 〜 内子劇場

2011.10
愛媛センター 山下

 この度、住宅リフォーム科若年コースの企業実習先開拓で、松山から50キロ以上離れた大洲に出かける機会があり、その折に以前香川で光環境について研究した金丸座(旧金毘羅大芝居)と非常によく似た木造の内子劇場が内子にあるので、少し足を延ばして寄ってみました。

 内子劇場は、木蝋や生糸等の生産で経済的にゆとりのある時代に、芸術、芸能を愛してやまない人々の熱意で生まれた木造の劇場です。 あるときは、歌舞伎、人形芝居、あるときは落語、映画等、農閑期には、もてはやされ出し物が内子座を彩り、人々の心の糧として大切にされました。名前を「内子座」といいます。

 内子座は、大正5年2月(1916)大正天皇即位を祝い、創建。木造2階建て瓦葺き入母屋造り。ホールとして活用後、老朽化のために取り壊されるところ、町民の熱意で復元。昭和60年10月、劇場として再出発。現在では年間7万余人が見学し、1万6000余人が劇場活用しています。

内子座概要
 木造2階建て瓦葺き入母屋造り ・収容人員 650名
 敷地 302坪 ・建築面積 1階177坪、3階65坪、計242坪 
 主要設備 :枡席・回り舞台・奈落・すっぽん 

内子座正面入り口 回り舞台と枡席
すっぽん 奈落とセリ

 内子座は、外観こそ少し違いますが、金丸座(旧金毘羅大芝居)と非常によく似た内部構造をしており、収容人員740名の金丸座に対し650名と一回り小さい規模となっています。 回り舞台・奈落・人力のすっぽんやセリ・傾斜した枡席など装備や構造はほとんど同じです。

 ただ作られた時代が、金丸座は天保6年(1835)、内子座は、大正5年2月(1916)であることにより、金丸座の回り舞台の回転装置が木製のコロであるのに対し、内子座では金属車が使われていた。 また、天井は「ブドウ棚」と「かけすじ」 が復原された金丸座に対し、内子座は格天井となっています。

回り舞台装置 格天井
光環境 稼働状況

 金丸座は、その光環境の検討において和蝋燭照明の使用法が話題となり、NHKが蝋燭実験を行い、その実験をお手伝いしたことが思い起こされる。 内子座では、まさに町内で和蝋燭の生産がなされており、劇場内照明に和蝋燭が存分に使われたことが偲ばれます。

 金丸座は、昭和45年に「旧金毘羅大芝居」として国の重要文化財に指定され、年に一度「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が開催され、四国路に春を告げる風物詩となっているのに対し、 内子座は、その使用予定表を見ると、町内の集会から演劇・歌舞伎・人形芝居・文楽・落語・俳句会・日本舞踊・内子高校吹奏楽部定期演奏会・カラオケ大会・弁論大会・カルテットコンサート・ミュージカルまで模様され、まさに地域や町民さらに町民生活までに密着した劇場となっていることが分かります。

 

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