●3● JISSEN NEWS 2005.冬 No.146

実践教育訓練研究協会は技能・技術教育に正面から取り組む、我が国で唯一の学協会である

社団法人実践教育訓練研究協会 理事
関東職業能力開発大学校 中嶋 俊一
 国内産業の空洞化がいわれてから久しい。製造業が持つ国際競争力の維持、強化が危ぶまれています。これは、中国を始めとする東アジア諸国のものづくりに対する激しい追い上げの結果です。特に中国については、今後「世界の工場」になるのではないかといわれています。たしかに、生産ラインを国外に持って行けば、ものの組み立ては可能で、同じ製品を国内で作ろうとすれば、人件費がかさみコスト的にあわないことになります。しかし、国内でのものづくりをやめるわけにはいきません。少なくとも国内人口1億2千7百万人分のものは作るわけで、その多くが国内で作られると思われます。産業の中で最も労働時間が短縮した業種は農業で、これは機械化のもたらした結果です。しかし、その農業にしてもカロリーベースの食料自給率が40%と先進国の中では際立って低く、これを何とか回復しようとする機運があります。それは食料安全保障の観点や、輸入食料に対する安全性の不安などからもたらされたものです。価格が安ければそれでよいとの考え方の見直しともいえます。産業の空洞化にしても、一部の企業では、工場を再び国内に戻し始めました。これには技術的な問題もありますが、資源の再循環をにらんだ生産を行おうとする場合には、国内生産の方が有利な場合が多くなります。理由は、設計時点で、製造法のみならず、資源の再生のため、製品を分解する方法までを考える必要があるためです。 実践教育訓練研究協会は、ものづくりのための技能・技術教育のあり方について活動している国内で唯一の学協会です。ものづくりのあり方や人材育成について、積極的な提言を行い、社会的な役割を果たしていくことが求められています。
2004.11.29 原稿受理


   
シンポジウム 「明日の主役 ものづくり技術者を育む」
日時: 2004年10月1日(金) 9:30〜12:00
パネラー: 小林辰滋氏 (前高度職業能力開発促進センター所長)
    浅野正好氏 (実践教育訓練研究協会主任研究員)
    谷口忠勝氏 (北陸職業能力開発大学校副校長)
    八木良尚氏 (呉工業高等専門学校教授)
    前田晃穂氏 (職業能力開発総合大学校東京校教授)
    橋場 章氏 (石川職業能力開発短期大学校教授)
   
 2004年実践教育研究発表会の3日目、機械系、電気・電子・情報系の合同シンポジウムが開催されました。まずパネラーが、以下の題目で講演を行いました。「ポリテクカレッジに今何が求められているか」(谷口氏)、「学生の品質保証について」(前田氏)、「電子技術科における技能教育の実践的取組みについて」(橋場氏)、「実践技術士について」(浅野氏)、「高専のJABEE認定への取組みについて」(八木氏)、「社会的影響力のある実践技術者を育成するための方法論について」(小林氏)
 また、休憩を挟んだ後の事例報告では、「学生の品質保証」(陣内氏)、「卒業生のアフターケア」(中田氏)が報告がされました。講演終了後、聴講者とパネラーとの間で活発な討議が行われました。
 
(青森職業能力開発短期大学校 成田 敏明)