建築・デザイン系

第8回 建築系ひとづくりフォーラム
Part T

岐阜県立森林文化アカデミー

2002年11月29日〜30日、岐阜県美濃市の「岐阜県立森林文化アカデミー」と岐阜県大野郡清見村の「オークヴィレッジ」「森林たくみ塾」にて、第8回 建築系ひとづくりフォーラムが開催されました。

※ このページは、「岐阜県立森林文化アカデミー」で行われたもののレポートです。

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川上から川下まで、
森林文化を総合的に教育研究

− 県出資で地域経済の活性化をめざす
「岐阜県立森林文化アカデミー」 −

■冬の飛騨地方へ、いざ

 第8回は、冬近づく11月末、2泊3日の日程で岐阜及び飛騨高山地方で行った。今回は、別分科会「木造研究会」と合同開催とし、前半の「森林文化アカデミー」と「オークヴィレッジ・森林たくみ塾」をフォーラムで、後半の「高山市街」と「白川郷」見学を研究会で実施した。

 この企画は、以前よりたくみ塾の佃理事長から招請を受けながら実現できなかったもので、ようやく夢叶うものとなった。冬迫る飛騨の山中は、白雪が積もる寒い季節であったが、参加者は、飛び入りの学生や大阪の専門学校教員など初参加組を交え、北海道から九州まで熱心な方々が参集され、記憶に残る充実した旅となった。

 行動は、新幹線岐阜羽島駅に集合後、会員有志が用意したワゴン車3台に分乗し、高速道を一路北上する果敢な長距離の旅となった。第一日目午後、佃氏の同行で美濃市の「森林文化アカデミー」を訪問し、夜は一路北上、清見村の「オークヴィレッジ」の宿泊施設に泊まった。

〔第1日目実施概要〕日時:2002/11/29(金)午後

・会場:「岐阜県立森林文化アカデミー」(岐阜県美濃市曽代88)
http://www.forest.ac.jp/

・テーマ:我が国初の森林業総合教育機関の理念と課題

・参加:計21名(一般参加10名+会員11名)

・対応:校側3名(三澤文子(木造建築スタジオ教授)、福井樹(教務課)、佃正壽(特任教授)の各氏)


■森林に囲まれた県が、本格的に人材育成に乗り出す

 岐阜県内の県立施設の再編の一環として、2001年に開校した(学長は森林学の熊崎実氏)。全国で珍しい、県出資による2年制の専修学校の形態を取る。地場林業の再生にむけ、森林の育成保全から木の活用法まで、川上から川下まで、幅広い総合的教育研究と後継者育成をめざす国内初の試みとして、各界から広く注目を集めている。

 森と木の活用を通し地域経済の活性化をめざす「地方自治型自由学校」を理念とし、フィールド中心、少人数、個別指導による実践重視カリキュラムが特徴である。

 設置される3部門(専修教育、短期技術研修、生涯学習)のうち、人材育成を行う専修教育部門は、「森と木のクリエーター科」(大卒・実務者対象、2年、20名)と「森と木のエンジニア科」(高卒対象、2年、20名)に分かれる。

 前者は、「森林文化」を共通ベースとし、「森林・林業」「地域計画・環境教育」「木造建築」「ものづくり」の4分野で構成され、入学後、上記の専門性を生かした多様な各研究会に分属し教育が始まる。後者は、半年後に「森のコース」と「木のコース」に分属する。


■公開コンペで意欲的な木造建物環境を創出

 建物はコンペにより、北川原温(意匠)稲山正弘(構造)の両氏案が採用された。斬新でユニークな意欲的作品は、木造の新たな可能性を拓くものとして2001年建築学会賞を受賞した。特に、「面格子」と「ツリー状立体トラス」による各建物は、新たな教育空間の雰囲気を醸し出していた。


■実務プロジェクトに挑む木造建築スタジオ教育

 案内をお願いした木造建築スタジオ教授の三澤文子氏から、同スタジオの教育について説明を受けた。地域に貢献しうる実践的教育研究を進めるため、同スタジオでは実務プロジェクトを取り入れ、例えば、建売住宅プロジェクトに学生を参加させたり、建物や店舗設計、地域との共同開発研究会等の活動を行っている。

 そのためか、社会人を中心とした同スタジオの研究室は、さながら設計事務所の雰囲気であった。


■演習林に建てられた自力建設プロジェクト

 同スタジオでは、学生への実践的授業の一環として、毎年、学生自らの企画とチームワークによる「自力建設プロジェクト」を実施している。案内された演習林内に建つ「森の中の四寸傘」は1期生の労作で、様々な点に工夫が凝らされていた。木造系の技能訓練は行っていないが、職人たちと相談しながら取り組んでいるとのこと。建設用地がふんだんにある広大な自然環境がうらやましく思えた。


■ぜいたくな少数教育、成果はこれから

 家具を含む「ものづくり」コースでは、たくみ塾OBが指導に当たられていた。その他の多様なコースは、当日見聞できず、木造構造試験室等も見学を漏らした。短時間では、全貌把握は無理と思われた。

 しかし、これだけ広大な施設に学生数は1学年40名、2学年で80名のみと、極端な少数教育が信じられない気がした。壮大な試行が始まったばかりと思われ、成果がどのように出るか、大いに期待しながら美濃市を後にした。


●森林文化アカデミーの設立理念(森と木を活用し、地域経済の活性化をめざす「地方自治型自由学校」)

●森林文化アカデミーの上空からの全景(手前が正門。33haの広大な演習林がこの写真のさらに上方に広がる。建物はコンペで、北川原温氏(意匠)、稲山正弘氏(構造)が設計。2001年度建築学会賞を受賞)

 

●木格子で構成された「センターゾーン」(間伐材などの小径木を活用)

●二重格子による「テクニカルセンター」

●ツリー状の立体トラスで構成されたユニークな「森の体験ゾーン」

●デッキ上で(中央:木造建築スタジオ教授三澤文子氏)

●木工実習場(右:講師山口博史氏、左:特任教授佃正壽正壽氏)

●演習林の『森の中の四寸傘』(木造スタジオ学生が自力建設)

●プレゼンルームで同スタジオの作品説明を受ける

▼各コースの実習風景(同校パンフ、HPより)

●森と木のエンジニア科/森のコース

●森と木のクリエーター科/里山研究会

●森と木のクリエーター科/木造建築スタジオ

●森と木のクリエーター科/ものづくり研究会

(秋山恒夫:フォーラム企画担当)

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